takeshiの街道を歩く カメラのイラスト

 ぶらり歩き   
 30. 伊豆半島を歩く (5)   平成24年4月20日
 踊子歩道旧天城街道(写真17)を整備した古道で、そのまま本谷川に沿って南に続く。踊子歩道に入ってから、生憎の小雨となり、傘をさしてのウォーキングになるが、木々が雨を除ける役割を果たしてくれて、気にならずに歩くことができる。この辺りは水量が豊富でその流れを利用してわさび田(写真18)が所々に見られる。

 しばらく木立と渓流を楽しみながら、1時間ほど踊子歩道を歩くと、国道414号に出る急勾配の階段が現れる。足許に注意して登り、国道414号を横切り、更に旧天城街道を進む。本谷川は微かな水音をたてて右下を流れている。道は天城峠に続くダラダラとした登り道となるが、登るにつれて雨脚が強くなり、川端康成の名作「伊豆の踊子」の書き出しにある「道はつづら折になって、いよいよ天城峠に近づいたと思うころ、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。」を思い出させる。

 旧天城トンネル(写真19)に辿り着いたときには、歩くのを諦めないといけないような降り方となる。トンネルの入り口手前にある屋根付きの休憩所で様子をみることとし、Kさんは濡れた衣服の着替えを行う。旧天城トンネルは明治38年(1905年)に開通した国内最古の石造トンネルで国の重要文化財に指定されている。
 
 雨宿りをしていると、反対側からトンネルを抜けて来た観光客があり、彼はここでウォーキングを諦め、国道に降りてバスで帰路に着くという。その後マイカーでやって来た人にトンネルの先の雨具合を聞いてみると、それほどの降り方ではないとのことで、意を決してこのまま歩くことに決める。「伊豆の踊子」では、主人公の私は踊子達に追いつこうと気持ちを急いてこのトンネルまでやってきて、「暗いトンネルにはいると、冷たい雫がぼたぼた落ちていた。南伊豆への出口が前方に小さく明るんでいた」と旧天城トンネルを簡単に描写している。トンネルに入ると、内部は天井、側壁、路面すべてが濡れており、等間隔で取り付けられた両側壁の電球が心許なく、トンネル内(写真20)を照らしている。伊豆の踊子の時代はこのような電球の明かりもなく、出口の点のような明かりを頼りにトンネルを抜けたことと思われる。
 

写真17 旧天城街道

写真18 本谷川のわさび田

写真19 旧天城トンネル

写真20 旧天城トンネル内部

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